理事長メッセージ


【はじめに】
1949年、戦後間もない頃、明るい豊かな社会の実現を理想とし、責任感と情熱をもった青年有志による東京青年商工会議所設立から、日本の青年会議所運動は始まりました。それから2年後、明日の札幌のために自分たちの手で出来ることを行おうと高い志を持った27名の青年たちが中心となり、全国で18番目の青年会議所として札幌青年会議所は誕生しました。
我々は、社会課題を解決し、明るい豊かな社会を実現するという青年会議所の理念に共鳴し、自らの意志でこの組織に在籍しているのです。

理想を語る前に、今の現実を知らなければならない。
現実からしかスタートできないからである。
ピーター・ドラッカー

我々の志は、誰にも恥じることのない崇高なものであることは、これまで69年間に渡り引き継がれてきたという現実が証明している通り、そこに疑いの余地などありません。しかし、長い年月が経ち時代の変化とともに、国際情勢や社会構造も設立当初とは様変わりしており、青年会議所を取り巻く環境も大きく変わってきているという現実にも目を背けてはいけないのです。今の時代を生きる当事者として、時代の流れを把握し、変化に対応する勇気と、不変の理想を追求する熱い情熱を胸に、責任を果たしていきましょう。志を同じくする仲間が一人でも多く集う、持続可能な組織を目指して。

【全国大会北海道札幌大会を迎えるにあたり】
本年度、念願だった全国大会北海道札幌大会が開催されます。これまでの歩みを振り返ると、全国各地より1万人を超えるJAYCEEが北海道・札幌に集うことを想像するだけで胸躍る気持ちであります。しかしながら、我々はまだ何かを成し遂げたわけではありません。改めて招致理念を読み解き、全国大会を主管する目的を見失うことなく、綿密な準備を進めなくてはなりません。また、決して忘れてはいけないことは感謝の気持ちであります。全国大会は我々の力のみで成し得るものではありません。いつも最大の支援者であり、理解者であるシニアクラブ会員の皆様、北海道の未来を想い、共に汗を流していただく北海道内各地会員会議所の皆様、まちの発展を願い我々の運動を理解していただいている市民、行政・諸団体の皆様、我々に関係を持っていただいている全ての皆様にとって、そして、この愛する北海道・札幌にとって、全国大会が最高の機会となるよう歩みを進めていきましょう。

関わる全ての方へ感謝の想いを胸に
次代へと続く大志の確立に向けて

【持続可能なまちを目指し】
未開の地であった風雪厳しいこのまちは、先人達の不断の努力により様々な困難を乗り越えながら切り拓かれ、今では日本最北の政令指定都市として発展を遂げています。我々は、とても平和で豊かな時代に生かされているのです。しかし、この礎を築いてこられた先人達は今、何を想うでしょう。平和な世の中を望み、未来を生きる我々のために命を懸けて国を守ってこられた世代がいて、日本の高度経済成長期を粉骨砕身の覚悟で支え日本の世界的地位を築いてこられた世代がいたからこそ今の時代があるのです。その世代の方々が、これからの人生を心身ともに豊かに暮らせる環境はあるでしょうか。また、今の時代を生きる我々は、かつての先人達がそうであったように、未来を生きる子供たちのために何かを残すことが出来るでしょうか。いまこそ、多世代が安心して住み暮らせるまちを実現し、持続可能なまちをつくっていきましょう。

次代を生きる世代にリレーションしていこう
先人たちに感謝の想いを胸に

【共感が生み出す価値】
我々が住み暮らすこのまちは、自然の恩恵に恵まれ四季折々の変化を楽しめる、世界的に見ても有数の魅力溢れるまちとして評価されています。それは、我々の故郷に対する誇りとさらなる愛郷心を育む好循環を生み出す素晴らしいものであります。さらに、今ではYOSAKOIソーラン祭り、ホワイトイルミネーション、さっぽろ雪まつりなどに代表されるような、有形無形の地域のたからが見事に融合された新たな文化が価値としてデザインされ、市民の共感を得ながら発展を遂げております。我々は、さらなる故郷の発展を願うとともに、地域に眠るたからを磨き上げ、潜在的な必要性と欲求を捉えた戦略的なアプローチにより、魅力溢れるまち札幌の発展に寄与していきましょう。

共感の輪を広げよう
このまちの潜在能力に誇りと自信を持って

【持続的に繁栄していくために】
近年、全国的に会員減少が続いています。かつては6万名を超える会員が在籍していましたが、今では半分の3万名程度であります。この問題は札幌青年会議所も例外ではなく、460名を超えるメンバー数をピークに会員減少に転じ、2010年度を境に一旦は純増に切り替わりましたが、ここ近年また会員減少に転じ200名を切る会員数となっています。社会課題を解決し、明るい豊かな社会の実現を目指す我々にとって、より多くの仲間でアイディアを出し合い、ともに切磋琢磨する中で成長し合う環境が大切なのは明白であります。組織を持続的に繁栄させていくためには、共感者を増やすとともに、多様な価値観を取り入れ、時代に即した組織へと変化していく必要があるのです。歴史と伝統を守る情熱と、変化することを恐れない勇気、そして、それらをしっかりと見極める英知を兼ね備え歩みを進めていきましょう。

組織改革から組織拡大へ
世代を越えて繋ぐ歴史と勇気

【物事の本質を知る】
全ての物事は基礎の上に成り立つものであります。また、組織である以上、ルールに基づいて全ての運動は展開される必要があります。しかし、そのルールは効果的な運動を阻害するものであっては本末転倒なのです。だからこそ、我々はしっかりとその本質を見極めるとともに、理解した上で運動を進めていかなくてはならないのです。議案は事業や運動を行う上で計画を策定する必要不可欠なものでありますが、会議を通すための議案であってはいけません。また、会議は意思決定や報告承認を行う場であって、会議自体が修練を主たる目的とするものではありません。持続可能な組織であり続けるためには、メンバー一人ひとりが同じ志のもと、主たる目的をはき違えることなく、経験を通じ成長するという姿勢ですべてに向き合い、運動を展開していくことが重要なのであります。

全ての出来事には意味がある
機動的かつ透明性の高い組織へ

【結びに】
明治2年(1869年)、新政府より北海道の開拓を命じられた初代開拓判官の島義勇は、コタンベツの丘より眼下に広がる無人の原野であった広大な土地を眺めながら壮大な計画を立てたと伝えられています。

「五州一の都を造る」
島 義勇

札幌というまちは、未来に想いを馳せた一人の壮大な志から始まり、その情熱が人を動かし、共感の輪を広げ、やがて開拓者精神という精神性がこの地に宿り、脈々と子孫に引き継がれながら発展を遂げてきたまちなのです。

一度きりの人生、二度と戻らない「今」という時間
「今」があるのは先人達が未来に想いを馳せ「今」と向き合い本気で生きた証である

我々は「今」という時間を生かされているのだ
恩送りをしていこう

「今」という一瞬一瞬と本気で向き合おう

全ては愛する誰かのためなのです

一般社団法人札幌青年会議所 2020年度理事長 浅木 武浩